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2016年4月12日 (火)

Some Other Time: The Lost Session From The Black Forest(その1)

[Resonance, HCD2019] 1668

 おそらく今年最大の、いや近年でも最も注目される新音源だろう。HMVのサイトにも、以前から「正真正銘!超驚愕の発掘音源!!ビル・エヴァンス幻のスタジオ録音が遂に陽の目を見ます!」とのコピーが踊っていたので、発売を楽しみにしていた方も多いのではないだろうか。というのも、トリオのメンバーが、すごい。エディ・ゴメスにジャック・デジョネット。つまり、1968年6月15日にライヴ録音されたかの名盤『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』と同メンバーである。このトリオによる録音は、他にはLP時代に Chazzer というから出た古典的ブート『Bill Evans Trio』に、同年7月13日のトリオ演奏から「Stella By Starlight」が(ほかオーケストラ曲も)、そしてヴィレッジ・ヴァンガードでの『The Secret Sessions』の同年8月23日のセッションから「My Man's Gone Now」「Who Can I Turn To」「Polka Dots And MoonBeams」「Emily」の4曲が残されていただけであった。このあとデジョネットは、エヴァンスのかつてのリーダー、マイルス・デイヴィスに引き抜かれることになる。

 で、今回、発掘された未発表のスタジオ録音は、1968年の6月20日というから、ちょうど『モントルー』の5日後ということになる。公演後、トリオはスイスからドイツに飛び、MPS のスタジオに入った。録音を担当したのは、このスタジオの所有者で MPSレーベルをする主宰するハンス・ゲオルク・ブルンナー=シュワ―。ちなみに MPS レーベルと言えば、エヴァンスファンにはすぐ「あの盤」が思いあたるのではないだろうか。そしてこちらもモントルー・ジャズ・フェスティヴァルからみ、あの『Montreux II』が収録された1970年であることが注目される。

「 トリオはモントルー・ジャズ・フェスティバルに二度目の出演を要請された。(中略)。
 数日後、トリオはノルウェーのコングスバーグ・ジャズ・フェスティバルでふたたび素晴らしい演奏を聴かせた。ピーター・ラーセンによると、たぶんその年の六月にトリオはブラック・フォレストのヴィリンゲンという街を訪れ、ハンス・ゲオルグ・ブルンナー・シュワーが建てた、とても芸術的なスタジオに向かった。そこで行われた音源は、ムジク・プロダクシオン・スヴァルツヴァルド・レーベル(MPS)から市場に出された。<ターン・アウト・ザ・スターズ>はそのスタジオでビル・エヴァンス・トリオが個人的に録音した一曲で、MPSの販売促進用アルバムに収録された。」ピーター・ペッティンガー『ビル・エヴァンス -- ジャズ・ピアニストの肖像』p.235

Image

 くりかえすようだが、このペッティンガーの記述は、1970年のことだ。つまりこれと同じようなことが、ちょうど2年前、1968年の6月の「モントルー1」の時にもあったということだろうか?

 実はこの『MPS VARIATION '73』という2枚組サンプラーLP、杉田宏樹氏のディスコグラフィーでは、「廃盤価格は8万円超。」とまで書かれているコレクター泣かせの盤だ。しかも、エヴァンスの曲はたった1曲だけにもかかわらず・・・。数年前、僕が海外サイトで買ったときはそこまで高くなかったが、探しているコレクターの方も多いだろう。実は今回の「The Lost Session」にも同じ「Turn Out The Stars」が含まれている。調べてみると、『MPS VARIATION '73』のレーベルに印字された「Turn Out The Stars」のタイムは、「4:56」。今回の『The Lost Session』のタイムも、「4:56」。もしやと思った僕は、物好きにも両者を聴き比べてみた。

 結果は、予想通りというか、まったく同じ演奏。『The Lost Session』のクレジットはしっかりしているので、『MPS VARIATION '73』の方の「1970年6月」というこれまでの想定記録が間違っていた、ということになるのではないだろうか。ということは、今回の発掘CDを買えば、エヴァンス・コレクターの難関のひとつであった『MPS VARIATION '73』は、同時にクリアできるということになる。これはある意味、朗報か。

 さて、発売元の Resonance レコードは、数年前に『Live at Art D'Lugoff's Top of the Gate』を発掘したレーベルであり、この盤は当時コロンビア大学の学生だった当レコードの社長ジョージ・クラビン氏が、同年10月にカレッジFM局のために収録したものだった。で、今回は、この『The Lost Session』である。クラビン氏と彼の元で MPS 音源を見つけ出してきた担当プロデューサーのゼヴ・フェルドマン氏の功績は、上記「Turn Out The Stars」の一件を持ち出すまでもなく、全エヴァンスファンの称賛に値するものだろう。彼らの努力があって、結果としてフィリンゲンでの全テイクが我々に残されたわけだから。

 次回から具体的に聴いていきたいが、ここで全曲のクレジットを載せておく。

<Disc 1>
1)You Go To My Head
2)Very Early
3)What Kind of Fool Am I? [Duo]
4)I'll Remember April [Duo]
5)My Funny Valentine
6)Baubles, Bangles & Beads [Duo]
7)Turn Out The Stars ※『MPS VARIATION '73』で既出
8)It Could Happen To You [Duo]
9)In A Sentimental Mood
10)These Foolish Things [Duo]
11)Some Other Time
<Disc 2>
1)You're Gonna Hear From Me
2)Walkin' Up
3)Baubles, Bangles And Beads [Trio]
4)It's Alright With Me [Incomplete] [Solo]
5)What Kind Of Fool Am I?
6)How About You
7)On Green Dolphin Street
8)Wonder Why
9)Lover Man (Oh, Where Can You Be?) [Solo]
10)You're Gonna Hear From Me [Alternate Take]

Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Jack DeJohnette (ds)

1968/6/20 (MPS Studio, Villingen, German)

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